第20回 著作権と学習データ
学習に使ってよいのか
- AIと著作権の話は「入口 (学習)」と「出口 (生成物)」に分けると見通しがよくなる
- 学習に作品を使うことの扱いは、日本・米国・EUで考え方が違う
- 作る側と開発する側、それぞれの主張と、その間をつなぐ動き
2つの問題を分けて考える
生成AIと学習に作品を無断利用してよいか、AIの生成物の権利は誰のものかという論点。世界中で訴訟とルール作りが進行中。">著作権の話は、大きく2つに分けると見通しがよくなります。1つ目は「入口」の問題、つまりAIの学習に他人の作品を使ってよいのか。2つ目は「出口」の問題、つまりAIが作った文章や画像が既存の作品に似ていたらどうなるのか、です。ニュースでは両方が混ざって語られがちなので、どちらの話かを意識するだけで理解しやすくなります。
入口: 学習に使ってよいのか
第1回で見たように、いまのAIは大量の例から学びます。文章のAIならウェブ上の文章や本、画像のAIなら大量の画像が学習データになります。その中には、誰かが著作権を持つ作品も含まれています。
日本の著作権法には、第30条の4という規定があります。作品を楽しむ(鑑賞する)ためではなく、情報を解析するといった目的で使う場合には、原則として権利者の許可なく作品を利用できる、という内容です。AIの学習もこれに当たると広く考えられており、日本は学習に比較的寛容な国だと言われます。ただし、著作権者の利益を不当に害することになる場合は対象外とされており、どんな場合がそれに当たるのかは議論が続いています。
米国では「フェアユース(公正な利用)」という考え方で、利用が許されるかどうかが個別に判断されます。作家や報道機関などがAI企業を相手に起こした訴訟が複数あり、裁判所の判断が注目されています。EUでは、権利者が機械で読み取れる形で「学習への利用を拒否する」意思を示せるしくみが設けられています。
出口: 生成物が似ていたら
AIが作ったものが既存の作品とそっくりだった場合はどうでしょうか。日本では、他人の作品と似ていること(類似性)と、その作品をもとにして作ったと言えること(依拠性)がそろうと、著作権の侵害になりうると考えられています。これは人間が作った場合と同じ考え方で、AIを使ったかどうかだけで決まるわけではありません。
AIが作ったものに著作権が認められるのか、という論点もあります。著作権は人間の創作を守るものだという考え方が基本で、人がほとんど関わらずにAIが自動で作っただけのものは保護されにくい、という見方が一般的です。人が工夫を重ねて創作に関わった場合の扱いは、ケースごとに判断されます。
それぞれの立場
この問題に、簡単な正解はありません。作品を作る側からは、「知らないうちに自分の作品が学習に使われ、自分の仕事と競合するAIが作られている」として、事前の同意や対価を求める声があります。AIを開発する側からは、「人間が多くの本を読んで学ぶのと同じで、作品そのものを配っているわけではない」「使えるデータが限られると技術の発展が止まる」といった主張があります。
その間をつなぐ動きとして、AI企業が報道機関や画像の提供会社などと契約を結び、対価を払ってデータを使う例も増えています。
たとえるなら
図書館で何千冊もの本を読み、文章の書き方を身につけた人を思い浮かべてください。その人が自分の言葉で新しい文章を書くことと、読んだ本の一部を丸写しして売ることは、まったく別の行為です。AIの学習と生成の関係を考えるときも、この区別が出発点になります。
ただし、このたとえには限界もあります。AIは人間とは比べものにならない量と速さで学び、それが商売にもなっています。その違いをどう評価するかが、まさにいま議論されている点です。

ニュースを読むコツ
著作権のニュースを見たら、まず「入口(学習)」と「出口(生成物)」のどちらの話か、そしてどの国のルールの話かを確かめてください。国によって法律の考え方が違うため、海外の判決がそのまま日本に当てはまるとは限りません。
なお、この回の説明は考え方の大まかな整理です。自分の仕事で生成物を使うときなど、実際の判断は個別の事情で変わるため、迷ったら専門家に相談してください。
確認クイズ
Q1. 日本の著作権法 第30条の4について、本文の説明に合うのはどれ?
- AIが作ったものの著作権は、すべてAIの開発会社のものになる
- 作品を楽しむ目的ではない情報解析などの利用は、原則として許可なく行える (例外あり)
- AIの学習に作品を使うときは、どんな場合でも権利者の許可が必要
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正解は B。第30条の4は、作品を鑑賞して楽しむためではない情報解析などの利用を、原則として許可なく認める規定です。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は対象外とされています。Q2. 日本で、AIの生成物が著作権の侵害になりうるのはどんな場合?
- AIを使って作ったものは、内容に関係なくすべて侵害になる
- 既存の作品と似ていて (類似性)、その作品をもとにした (依拠性) と言える場合
- 生成した文章が一定の文字数を超えた場合
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正解は B。類似性と依拠性がそろうと侵害になりうる、というのは人間が作った場合と同じ考え方です。AIを使ったかどうかだけで決まるわけではありません。Q3. 著作権のニュースを読むときのコツとして、本文で挙げたのはどれ?
- 海外の判決は、そのまま日本にも当てはまると考える
- 入口 (学習) と出口 (生成物) のどちらの話か、どの国のルールの話かを確かめる
- 見出しに書かれた結論だけを覚えておく
