第15回 GPUと半導体
なぜNVIDIAが強いのか
- AIの計算は「単純な掛け算と足し算を、とにかく大量に」
- GPUはもともと画像を描くための部品で、たくさんの計算を同時にこなすのが得意
- NVIDIAの強さはチップだけでなく、ソフトと開発者の蓄積にもある
AIの計算の正体
第13回で見たように、AIのモデルは膨大な数の学習で調整される膨大な数値。「7B」は70億個の意味で、多いほど賢くなる傾向があるが動かすコストも増える。">パラメータを持っています。学習でも推論(第14回)でも、コンピューターがしている計算の中身は、意外なほど単純です。数値どうしの掛け算と足し算を、気が遠くなるほど大量に繰り返しているのです。
一つひとつは小学生でもできる計算でも、量が桁違いです。そこで、どんな部品で計算するかが、速さと費用を大きく左右します。
CPUとGPUの違い
パソコンの頭脳であるCPUは、少数の強力な芯(コア)を持ち、複雑な処理を順番に素早くこなすのが得意です。表計算もメールも動画の再生も、何でもこなす万能選手です。
一方のGPUは、もともとゲームなどの画面に映る画像を描くための部品でした。画面は無数の小さな点でできていて、それぞれの色を同時に計算する必要があります。そのためGPUは、小さな芯を大量に並べ、単純な計算を一斉にこなす作りになっています。
この「たくさんの計算を同時に(並列に)」という特徴が、AIの計算にぴったり合いました。2010年代のはじめには、GPUを使って学習した画像認識のモデルが大きな成果を上げ、ディープラーニング(第3回)の時代を切り開くきっかけの一つになりました。
なぜNVIDIAが強いのか
GPUを作る会社の中で、AIの分野で特に存在感が大きいのがNVIDIA(エヌビディア)です。理由としてよく挙げられるのは、チップの性能だけではありません。
NVIDIAは、GPUを画像以外の計算にも使えるようにするためのソフトの土台「CUDA(クーダ)」を、2000年代後半から提供してきました。研究者や技術者はこの上でプログラムを書き、AIの開発に使われる多くのソフトもCUDAを前提に作られてきました。長年の積み重ねで道具とノウハウがそろい、それに慣れた開発者が世界中にいます。他社が性能の高いチップを作っても、この環境ごと乗り換えてもらうのは簡単ではありません。
さらに、AIの大規模な学習では何千ものGPUを同時に働かせるため、GPU同士を高速につなぐ技術も重要です。NVIDIAはこの部分にも力を入れています。なお、NVIDIAは主にチップの設計を担う会社で、実際の製造は半導体の受託製造の会社が担っています。

たとえるなら
CPUは、どんな料理も手際よく仕上げる腕利きの料理長です。GPUは、同じ下ごしらえを一斉にこなす大勢の調理スタッフです。何千人分の野菜を刻むなら、料理長一人より大勢のスタッフのほうが圧倒的に早く終わります。そしてCUDAは、そのスタッフ全員が慣れ親しんだ厨房の段取りです。別の厨房に移ると、段取りから覚え直す必要があります。
追いかける動き
AIの計算向けに専用のチップを作る動きも広がっています。Googleが自社で開発するTPUのように、クラウドの大手が自前のチップを作る例や、新興の半導体企業が独自の設計で挑む例があります。スマートフォンやパソコンにも、AIの計算を受け持つ専用の部品が組み込まれるようになってきました。どの挑戦者にとっても、チップの性能に加えて、開発者が使いやすいソフトの土台をどこまでそろえられるかが大きな課題になります。
ニュースを読むコツ
「GPU不足」というニュースは、作りたい・使いたい量に対して、チップや部品の供給が追いつかない状態を指します。AI企業の巨額の「データセンター投資」も、その多くはGPUなどの計算機と、それを動かす電力や冷却の設備に向かっています。
新しいチップの発表を見たら、チップ単体の速さだけでなく、使えるソフトがそろっているか、たくさんつないで使えるかにも注目しましょう。高性能な半導体の輸出を国が規制するニュースが出るのも、AIの計算力が国の競争力に直結すると考えられているからです。
確認クイズ
Q1. GPUがAIの計算に向いている理由として、本文で説明したのはどれ?
- インターネットに直接つなぐ機能を持っているから
- 単純な計算を、たくさん同時に(並列に)こなすのが得意だから
- 一つの複雑な計算を、順番にこなすのが最も速いから
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正解は B。AIの計算の中身は、大量の掛け算と足し算です。たくさんの小さな芯で一斉に計算するGPUは、この種類の仕事にぴったりでした。Q2. GPUは、もともと何のために作られた部品?
- AIの学習専用の部品として
- ゲームなどの画面に映る画像を描くため
- データを長期間保存しておくため
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正解は B。GPUは画面の画像を描くための部品として発展しました。画面の点の一つひとつを同時に計算する作りが、のちにAIの計算にも役立つことがわかったのです。Q3. 本文で挙げた、NVIDIAが強い理由に当てはまるのはどれ?
- AIのモデルを世界で一番多く公開していること
- 世界で唯一、半導体を製造できる会社であること
- チップだけでなく、CUDAをはじめとするソフトの蓄積と、それに慣れた開発者の多さ
