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基礎講座 · 実務 第2章 生成AIを使いこなす

第7回 プロンプトの基本
指示の出し方で答えが変わる

約5分で読めます

この回でわかること

プロンプトとは

生成AIに送る指示や質問の文章を、プロンプトと呼びます。「このメールを短くして」「会議の議題を3つ考えて」といった一文も、立派なプロンプトです。

同じAIを使っていても、プロンプトの書き方ひとつで、返ってくる答えの質は大きく変わります。「AIを使ってみたけれど、ありきたりな答えしか出なかった」という感想の多くは、AIの性能よりも、指示の出し方に原因があります。

なぜ指示で答えが変わるのか

第5回で見たように、LLM(大規模言語モデル)は、渡された文章に続く言葉として、もっともらしいものを予測して文章を組み立てます。AIが手がかりにできるのは、基本的にプロンプトに書かれたことだけです。あなたの職場の事情も、相手との関係も、書かなければAIには伝わりません。

「メールを書いて」とだけ頼むと、だれに、何の用件で、どのくらいの長さで書けばよいのかがわかりません。AIは足りない部分を「よくある書き方」で補うしかないので、誰にでも当てはまる、無難で平均的な答えになりやすいのです。反対に、手がかりが増えるほど、答えはあなたの状況に近づいていきます。

左は「メールを書いて」とだけ頼んだため、だれに何の用件かがわからず、空欄だらけの無難な文面が返る様子。右は目的・背景・条件・出力の形の4つを伝えたため、そのまま使える文面が返る様子を比べた図
図1 あいまいな指示と、具体的な指示

よい指示の4つの要素

具体的なプロンプトに含めたいのは、次の4つです。

1つ目は「目的」。何のための文章か、何を達成したいのかです。2つ目は「背景」。相手はだれか、どんな事情があるのか。3つ目は「条件」。文字数、敬語の度合い、入れてほしい言葉や避けたい表現などです。4つ目は「出力の形」。箇条書きか、表か、件名と本文に分けるのか、といった答えの形を指定します。

たとえば「長年の取引先に、納品が3日遅れることをおわびするメールを書いてください。300字以内で、件名と本文に分けてください」と頼めば、ほとんど手直しせずに使える下書きが返ってきます。4つすべてを毎回そろえる必要はありませんが、答えが物足りないときは、どれが欠けているかを点検してみてください。

会議メモの整理なら、「次のメモを、来週の部内会議で共有するためにまとめてください。決まったこと・担当者の宿題・次回の議題の3つに分けて、箇条書きにしてください」のように頼みます。目的と出力の形を伝えるだけで、そのまま配れる形に近づきます。

タクシーの後部座席から、乗客が地図を広げて運転手に行き先を指さしているイラスト
図2 タクシーで行き先をはっきり伝える

たとえるなら

タクシーに乗って「駅まで」とだけ伝えるのと、「駅の北口のロータリーまで、9時までに着きたいです」と伝えるのとの違いに似ています。運転手の腕は同じでも、行き先と事情がはっきりしているほど、望みどおりの場所に、望みどおりの時間で着けます。AIは腕のいい運転手ですが、行き先を決めるのは乗客の側なのです。

一度で決めなくていい

プロンプトは、一度で完璧に書く必要はありません。返ってきた答えを見て、同じ会話の中で「もっと短く」「専門用語を減らして」「3案出して」と足りない点を伝えれば、AIはそれまでのやり取りを踏まえて直してくれます。やり取りを重ねるほど、答えはあなたの意図に近づいていきます。

ほかにも、答えてほしい形の例を1〜2個見せる方法や、「あなたは経験豊富な編集者です」のように役割を伝える方法があります。例を見せる方法は、第10回のファインチューニングとも深く関係しています。

上手な付き合い方

指示の工夫を体系的に研究し、実践することを、プロンプトエンジニアリングと呼びます。ニュースで目にするAIサービスの多くも、利用者からは見えないシステムプロンプトで、AIの口調や守るべきルールをあらかじめ指示しています。

ただし、具体的に書くことと、何でも書き込むことは違います。お客様の名前や社外秘の数字など、AIに渡してよい情報かどうかは、送る前に一度立ち止まって考えましょう(第22回)。

やってみよう

同じ用件を、あいまいな指示と具体的な指示の2通りで頼んで、答えがどう変わるかを比べてみましょう。

  1. 「会議のお知らせメールを書いてください。」

    成功の目安: 日時や場所が「〇月〇日」のような空欄のままだったり、どの職場でも使えそうな一般的な文面だったりすれば成功です。それが、手がかりの少ない指示に対するAIの答えです。

  2. 新しい会話で「社内の5人のチームに、来週の定例会議の日時が変わったことを知らせるメールを書いてください。変更前は火曜10時、変更後は水曜15時で、場所は同じ第2会議室です。忙しい人が多いので、件名だけで用件がわかるようにして、本文は150字程度にしてください。」と送ってください。

    成功の目安: 件名に変更の内容が入り、本文に変更前と変更後の日時が両方書かれていて、1回目よりずっと短くまとまっていれば成功です。2つの答えを並べて比べてみてください。

うまくいかないとき: 1回目でAIが「どんな会議ですか」と質問を返してきた場合も、情報が足りないことをAIが教えてくれている証拠なので、そのまま2回目に進んでください。2回目で条件が抜けていたら、同じ会話で「件名に日時を入れて」などと、足りない点だけを伝えて直してもらいましょう。

確認クイズ

Q1. よいプロンプトに含めたい要素として、本文で挙げた4つはどれ?

  1. あいさつ・お礼・おわび・結びの言葉
  2. 日付・天気・場所・自分の名前
  3. 目的・背景・条件・出力の形
答えを見る正解は C。何のためか(目的)、どんな事情か(背景)、文字数などの決まり(条件)、箇条書きや表などの答えの形(出力の形)。答えが物足りないときは、どれが欠けているかを点検しましょう。

Q2. 指示があいまいなとき、AIの答えはどうなりやすい?

  1. 足りない部分を「よくある書き方」で補うので、無難で平均的な答えになる
  2. 必ずエラーになって、何も答えない
  3. 毎回まったく同じ答えが返ってくる
答えを見る正解は A。AIが手がかりにできるのは、基本的にプロンプトに書かれたことだけです。情報が足りないと、誰にでも当てはまる一般的な答えで埋めるしかありません。

Q3. 答えが思いどおりでなかったときのコツとして、本文で紹介したのはどれ?

  1. すぐに別のAIサービスに乗り換える
  2. 同じ指示を一字一句変えずに何度も送る
  3. 同じ会話の中で、足りない点を伝えて直してもらう
答えを見る正解は C。AIはそれまでのやり取りを踏まえて答えを直してくれます。「もっと短く」「3案出して」のように、足りない点だけを伝えるのが近道です。

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