第2回 機械学習のしくみ
データから規則を見つける
- 機械学習は、データの中から規則(パターン)を見つけるしくみ
- 「学習」とは、予想と正解のずれを小さくする調整の繰り返し
- 3つの学び方と、過学習という落とし穴
規則を、人間ではなくデータに聞く
第1回で、いまのAIの主流は「例から学ぶ」機械学習だと紹介しました。今回は、その「学ぶ」の中身をのぞいてみます。
身近な例で考えましょう。ある店で、毎日の最高気温とアイスクリームの売り上げを記録していたとします。表を眺めると、暑い日ほどよく売れているようです。では、明日が30℃ならいくつ仕入れればよいでしょうか。人間なら経験と勘で決めるところを、機械学習では過去のデータから「気温が上がると、売り上げがどれくらい増えるか」という規則を計算で見つけ出します。規則が見つかれば、まだ来ていない明日の売り上げも予想できます。
学習とは「ずれを小さくする」調整
規則はどうやって見つかるのでしょうか。図1のように、気温と売り上げの記録を点で描いたグラフを思い浮かべてください。機械学習は、まず適当な線を1本引きます。その線で予想した売り上げと、実際の売り上げ(正解)を比べると、ずれが出ます。そこで、ずれが少し小さくなる方向へ、線の傾きや位置をわずかに動かします。これを何度も繰り返すと、線はやがて点の集まりにいちばんよく合う位置に落ち着きます。
この「予想する→正解と比べる→少し直す」の繰り返しが、機械学習でいう「学習」です。線の傾きのように、学習で調整される数値をパラメータと呼びます。アイスの例ではパラメータは数個ですが、いまの大きなAIでは膨大な数になります(第13回で詳しく)。
学習を終えたAIを実際に使って予想することは「推論」と呼びます。作るときと使うときでは、かかる手間もお金も違います(第14回)。
3つの学び方
機械学習には、大きく分けて3つの学び方があります。
1つ目は教師あり学習です。「この写真は猫」「この日の売り上げは120個」のように、正解のついた例から学びます。アイスの例もこれにあたり、実用の場面で広く使われている学び方です。
2つ目は教師なし学習です。正解はつけずにデータだけを渡し、似たもの同士のグループを見つけさせます。たとえば買い物の記録から、よく似た買い方をするお客さんのグループを見つける、といった使い方です。
3つ目は強化学習です。正解を教える代わりに、うまくいったら「ほうび」を与えます。AIは試行錯誤しながら、ほうびが多くなる行動を身につけていきます。囲碁などのゲームのAIや、ロボットの動きの学習で使われてきました。

たとえるなら
教師あり学習は、八百屋の見習いがスイカの目利きを覚える様子に似ています。見習いはスイカをたたいて「これは熟している」と予想し、親方が「いや、まだ早い」と答え合わせをします。外れるたびに、音の聞き分け方を少しずつ直していく。何百個もこれを繰り返すうちに、見習いは親方がいなくても見分けられるようになります。
ここで大事なのは、親方が「この音ならこう」という規則を一度も言葉で教えていないことです。見習いは、答え合わせの積み重ねから、自分で規則をつかみました。
落とし穴: 過学習と偏り
機械学習には、よく知られた落とし穴があります。学習に使った例にぴったり合わせすぎて、新しいデータでは外れてしまう状態で、過学習と呼びます。問題集の答えを丸暗記した生徒が、同じ問題なら満点なのに、少し形を変えた問題には手も足も出ない。それと同じことがAIでも起きます。そのためAIの性能は、学習に使っていない別のデータで試して測るのが基本です。
学習データの偏りにも注意が必要です。AIは、データに含まれる偏りをそのまま身につけてしまいます。夏のデータしか無ければ、冬の売り上げはうまく予想できません。
ニュースを読むコツ
「AIで〇〇を予測」というニュースを見たら、どんなデータで学んだのか、そして学習に使っていないデータで確かめた結果なのかに注目してみてください。データの量と質、そして偏りの有無が、そのAIの実力を大きく左右しています。
確認クイズ
Q1. 機械学習でいう「学習」とは、どんな作業?
- 人間が見つけた規則を、一つずつ書き足していくこと
- 学習に使ったデータを、そのまま丸ごと記憶しておくこと
- 予想と正解のずれが小さくなるように、中の数値を少しずつ調整すること
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正解は C。予想する→正解と比べる→少し直す、の繰り返しが「学習」です。このとき調整される数値をパラメータと呼びます。Q2. 「教師あり学習」の説明として正しいのはどれ?
- 試行錯誤しながら、ほうびが多くなる行動を身につける
- 正解のないデータから、似たもの同士のグループを見つける
- 「これは猫」のように、正解のついた例から学ぶ
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正解は C。正解つきの例から学ぶのが教師あり学習です。グループを見つけるのは教師なし学習、ほうびを手がかりにするのは強化学習です。Q3. 「過学習」とはどんな状態?
- 学習に使った例には強いのに、新しいデータでは外れてしまう状態
- データが少なすぎて、何も学べなかった状態
- 学習の時間が長すぎて、コンピューターが壊れてしまう状態
