第3回 ニューラルネットワークとディープラーニング
脳をまねた計算を何層も重ねる
- ニューラルネットワークは、脳の神経細胞をまねた単純な計算の集まり
- 計算の層を何層も重ねたものがディープラーニング。見分ける手がかりを自分で見つける
- 2010年代に急に実用化した理由と、弱点
脳をまねた計算
第1回で、学習させる手法。2010年代のAIブームの原動力。">ディープラーニングは機械学習の一種だと紹介しました。その土台にあるのがニューラルネットワークです。名前のとおり、脳の神経細胞(ニューロン)がつながり合うしくみをまねて作られた計算のしかけです。
ただし、本物の脳を再現しているわけではありません。1つひとつの「ニューロン」がしているのは、とても単純な計算です。いくつかの数を受け取り、それぞれに「重み」と呼ばれる数を掛けて足し合わせ、その結果を次のニューロンに渡す。重みが大きい入力ほど、結果に強く効きます。第2回で見た「学習で調整される数値(パラメータ)」の中心は、この重みです。
層を重ねる
ニューロンは、横一列に並んだ「層」として組まれます。入力を受け取る層、答えを出す層、そしてその間に挟まる中間の層です。この中間の層を何層も重ねたものを、ディープラーニング(深層学習)と呼びます。「ディープ」は、層が深く重なっていることを指しています。
層を重ねると何がうれしいのでしょうか。写真に猫が写っているかを見分けるAIで、おおまかなイメージを説明します。入力に近い層は、線の向きや色の境目といった単純な特徴に反応するようになります。次の層は、それらを組み合わせて模様や丸い形をとらえます。さらに奥の層では目や耳のような部品になり、最後に「猫らしい」という判断にたどり着きます。単純な計算でも、何層も積み重ねると複雑なものを見分けられるようになるのです。
手がかりを自分で見つける
ここがディープラーニングの最大の特徴です。それまでの機械学習では、「耳がとがっているか」「ひげがあるか」のように、何に注目すれば見分けられるかという手がかりを、人間が考えて用意することが多くありました。ディープラーニングでは、大量の写真と正解を見せるだけで、どの層が何に反応すべきかまで、学習の中でAI自身が見つけていきます。
なぜ2010年代に花開いたのか
ニューラルネットワークの考え方自体は古く、1950年代にはすでに研究されていました。それが一気に主役になったのは2010年代です。2012年の画像認識のコンテストで、ディープラーニングを使ったチームが他を大きく引き離して優勝し、世界中の研究者を驚かせました。
背景には3つの追い風がありました。インターネットの普及で、学習に使える大量のデータが集まったこと。ゲームの画面を描くために発達したGPUという半導体が、ニューラルネットワークの計算を高速にこなせると分かったこと(第15回で詳しく)。そして、深い層でもうまく学習させる工夫が積み重なったことです。

たとえるなら
ディープラーニングは、長い流れ作業のラインに似ています。持ち場の一人ひとりは「部品を1つ付ける」だけの単純な作業しかしません。それでも、たくさんの持ち場を順番に通るうちに、材料のかたまりは完成したおもちゃの車になります。
しかもこの工場では、各持ち場で何をするかを、誰も指示書に書いていません。完成品の見本と見比べながら、各持ち場が自分の作業を少しずつ直していくうちに、ライン全体がうまく回るようになったのです。
弱点もある
強力なディープラーニングにも弱点があります。まず、大量のデータと計算が必要なこと。そして、中で何が起きているのかが人間には分かりにくいことです。重みの数は膨大で、なぜその答えになったのかを一つひとつたどるのは困難です。「ブラックボックス」と呼ばれるのはこのためです。
ニュースを読むコツ
いま話題の生成AIも、その中身はほとんどがディープラーニングです。ニュースで「新しいモデル」「巨大なデータセンター」「GPUの奪い合い」といった言葉を見たら、それはこの「層を重ねた計算」を、より大きく、より速く動かすための競争だと考えてみてください。話の流れがぐっとつかみやすくなります。
確認クイズ
Q1. ディープラーニングの「ディープ(深い)」は何を指している?
- 計算の層を何層も深く重ねていること
- 海の深さほどの大量のデータを使うこと
- 人間には分からない深い意味まで考えること
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正解は A。ニューラルネットワークの中間の層を何層も重ねたものがディープラーニングです。「ディープ」は層の重なりの深さを指しています。Q2. ディープラーニングの大きな特徴として、本文で説明したのはどれ?
- 何に注目すれば見分けられるかという手がかりを、データから自分で見つける
- ほんの少しのデータからでも、高い精度で学べる
- 見分けるための手がかりを、人間がすべて考えて用意する必要がある
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正解は A。それまでの機械学習では、注目すべき手がかりを人間が考えることが多くありました。ディープラーニングは、どの層が何に反応すべきかまで学習の中で見つけます。その代わり大量のデータが必要です。Q3. ディープラーニングが2010年代に急に実用化した理由として、本文で挙げたのはどれ?
- 大量のデータと、GPUによる高速な計算がそろったこと
- 人間の脳のしくみが完全に解明されたこと
- ニューラルネットワークという考え方が2010年代に初めて発明されたこと
